遊戯王歴史探究 歴代の最強デッキを考える

遊戯王OCGの歴代の環境を実際にプレイし、その時点での最強デッキを考えていきます

Vol.5環境 グッドスタッフの反撃

Vol.5登場

 1999年9月23日、Vol.5が発売されました。コントロール奪取の原点にして頂点ともいえる心変わりや、第1期としてはなかなかに優秀な除去である死者への手向けが収録されています。カードリストはこちら

心変わり

 このパックの目玉はなんといっても心変わりでしょう。1ターン限定とはいえ、一切の縛りなく相手モンスターのコントロールを奪うというのは驚愕の性能です。

 用途は多岐に渡り、単純に相手場を空けて直接攻撃を通す、奪ったモンスターのリバース効果を利用してしまう、奪ったモンスターを上級モンスターの生け贄にしてしまう...と、多様な召喚方法のある現代でなくとも、やられたら相当にきついことのオンパレードです。

 特に裏側守備表示のモンスターも対象にできる点が重要で、環境に大きな変化を及ぼしています。

死者への手向け

 同じく裏側守備表示対策が可能なカードとして、死者への手向けというカードも登場しています。こちらは除去のため、相手のモンスターを上手く利用するといったことはできませんが、確実な破壊が約束されているのが強みです。

 ただし、強欲な壺が3枚詰めるとはいえ手札1枚というコストは高く、この時点では採用が難しい印象を受けました。

白い泥棒・仮面魔道士

 ダメージを与えることによって誘発する効果を持ったモンスター達です。これまでにない効果をしており、戦闘ダメージにライフを削る以外の意味が生まれた瞬間でもあります。

 心変わり等優秀な除去の増加もあって効果が使える機会は十分あり、特に白い泥棒は強力です。

 

環境解説

 前環境は突如エクゾディアに支配される格好となりましたが、今回の追加でグッドスタッフが反撃することになりました。というのも、追加カードがグッドスタッフ側に偏っていたからです。

 白い泥棒の効果を使われた場合、グッドスタッフでは手札を1枚削られただけといえますが、エクゾディアの場合手札がそのまま勝敗に直結するため、パーツは勿論、何を抜かれても致命傷になり得ます。

 心変わりはエクゾディア側も使用することができますが、グッドスタッフから奪って強いのは聖なる魔術師くらいで、裏側守備表示が確実に聖なる魔術師かわからないため、あまり強く使うことができません。それに対して、グッドスタッフは、エクゾディア側がセットするリバースモンスター(聖なる魔術師、スケルエンジェル、人喰い虫)のどれを奪っても申し分ありません。

 結果として、白い泥棒をケアするために光の護封剣を温存することが難しくなっている点もあり、エクゾディアは最強の座を明け渡すことになりました。

 

Vol.5環境 最強デッキ解説

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 エクゾディアの失脚を考慮して、ミラーに寄せています。ただ、この構築でもエクゾディアには有利です。

白い泥棒

 ミラーマッチでも強いです。墓地のこのカードに死者蘇生を使うことが多くなったため、これまでグッドスタッフのミラーでありがちだった、死者蘇生溜め込みによるバーストダメージによる勝利は減っています。代わりに、アドバンテージの差による勝利が増えた格好です。

仮面魔道士

 スケルエンジェルと交代で採用しています。スケルエンジェルよりも優れている点として、2枚目以降のドローを狙えること、スケルエンジェルと違い使い切りでないので、心変わりに耐性があること、白い泥棒によるリバースモンスターへの攻撃を躊躇させられること、等があります。

 

プレイング解説

 心変わりによって、プレイングも大きく影響を受けています。

 具体的にはモンスターのセットに関することで、できれば聖なる魔術師を心変わりで奪われることは避けたいです。そのため、本来の優先順位としては聖なる魔術師をセットするところを敢えて人喰い虫からセットしたり、場合によってはヂェミナイ・エルフをセットすることもあり得ます。反対に、心変わりを打つ側もその裏側守備表示のモンスターが何なのかをよく考えてから使う必要があります。

 自分が相手よりも優勢な状況では、手札に聖なる魔術師しかモンスターがいなくても、セットせずにターンを返すこともあります。このように、心変わりは理不尽な性能ながらも戦術性の高いカードであるため、環境自体はなかなかに面白いものとなっています。

Booster 4、PREMIUM PACK環境 エクゾディア降臨

Booster 4、PREMIUM PACK同時発売

 1999年8月26日、Booster 4が発売されました。カードリストはこちら

 また、同日に遊戯王OCG初の全国大会が開催されており、大会会場の東京ドーム内限定で、PREMIUM PACKが発売されました。カードリストはこちら

 このPREMIUM PACKですが、販売体制の不備により、当時販売中断となっています。それでも一定数は流通したことから、女剣士カナンの前例も考慮し、本ブログではこの日付に販売されたものとして扱います。

 

攻撃力のハイパーインフレ ヂェミナイ・エルフ

 これまでの遊戯王は、1600打点のアタッカー達が主役でした。ところが、このブースターにて突然猛烈なインフレが起きており、下級1900打点というこれまででは考えられないスペックのモンスターが登場しています。他にも1850、1800打点も収録されており、1600ラインは一瞬で存在価値を失うことになりました。

最強ドローカード第2弾 天使の施し

 打点のインフレ以上に強烈なインパクトを与えたのが、天使の施しの登場です。カードを3枚引いて2枚捨てるという、シンプルながら大胆な効果をしており、1枚のカードで3枚の手札を入れ替えることができます。これによってデッキの回転率が大きく上がり、事故の軽減に繋がります。

 また、何よりもこのカードが強力なのは、墓地に捨てても問題ないカードを捨てることで、デメリットを踏み倒せてしまうことでしょう。しかし、幸いにもこの時点では、捨ててもアドバンテージを失わないようなカードはまだ登場しておらず、純粋なサイクルカードの位置に収まっています。

 それでも非常に強力なカードであるのは間違いなく、墓地にこのカードと強欲な壺がある場合、聖なる魔術師でこちらを選択することも十分にあるほどです。

 後程紹介する最強デッキもこのカードの存在なくして成立しないといっていい構築となっており、環境に与える影響はこれまでの全カードの中でも一二を争うレベルだと思います。

五体揃ったエクゾディア 始動の時

 実は、これまでにエクゾディアの手足はポツポツと登場していました。それが、今回のPREMIUM PACKで本体が収録されたことで、ようやくデッキを組めるようになったのです。

 ここまでの環境では、デッキタイプという概念がなく、単純に強いカードを詰め込んだ、いうなればグッドスタッフしか存在しませんでした。エクゾディアの登場は、グッドスタッフ以外のアーキタイプを環境にもたらしたという点でも、歴史的な出来事なのです。

 

Booster 4環境 最強デッキ解説

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 こちらが、この環境の最強デッキと結論づけた構築です。

 エクゾディアパーツが全て3積みと、一見衝撃的な内容となっています。探究チームとしても、当初はこのようなリストは想定していなかったため、先に調整過程から説明します。

 

 まず、始めに考案されたのが、ヂェミナイ・エルフをアタッカーに据えたグッドスタッフです。

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 前環境のリストから攻撃力1600の3種9枚を抜き、ヂェミナイ・エルフ、天使の施し、デーモンの召喚を採用しています。

 ヂェミナイ・エルフに次ぐアタッカーであるメカ・ハンターが採用されていないのは、ミラーマッチでヂェミナイ・エルフに素で戦闘破壊されてしまうと損失が大きすぎるためです。

 また、前環境で不採用だったデーモンの召喚を3積みできているのは、天使の施しのおかげです。召喚できれば強い反面手札で腐るリスクがありましたが、天使の施しによりリスクの軽減が可能になりました。手札から直接墓地へ送れることも重要で、死者蘇生溜め込みによるバーストダメージ向上に繋がっています。

 

 上記グッドスタッフの作成後、エクゾディアは出揃ったばかりですが、この環境でも戦えるのか試すために、以下のようなデッキを仮組みし、グッドスタッフと戦わせました。

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 当初、グッドスタッフには到底敵わないだろうと予想していたのですが、実際にはこの構築でもグッドスタッフといい勝負、どころか微有利であり、本格的にエクゾディアの調整も開始しました。

 そして、調整の結果壁モンスターや死者蘇生、羽根帚が抜け、エクゾディアパーツに置き換わることになりました。

 このパーツ3積みエクゾディアに対して、メカ・ハンターを採用するなどして対エクゾを意識したグッドスタッフをぶつけもしましたが、結果としてはエクゾディアの大幅有利でした。

 そうなると、環境はエクゾディアミラーを意識することになりますが、この時点のカードプールでは、これ以上ミラーマッチで強くなるカードが存在しないため、この時点で最強デッキと結論づけました。

 以下、改めて最強デッキのリストです。

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エクゾディアパーツ15枚

 壁モンスターが抜け、代わりにエクゾディアパーツが3積みされています。この理由は2つあり、一つ目は壁モンスターに回す召喚権が無いからです。この環境では強欲な壺、天使の施し、聖なる魔術師によってかなりの高スピードで手札の入れ替えが進むため、毎ターンリバースモンスターを用意することは難しくありません。そのため壁モンスターを実際に場に出すことはほとんどなく、ほとんどは天使の施しの効果で捨てられていました。そして、どうせ捨てるなら、エクゾディアパーツにしておいた方が五体揃う確率が高まっていいというわけです。

 二つ目は、天使の施しの存在です。エクゾディアパーツは同じパーツが被ってしまうと、片方は完全に意味のないカードになってしまうため、本来であれば全て3積みというのは無理のある構築です。しかし、この環境では天使の施しを乱発できるため、被りもそこまで気にならないのです。

 エクゾディアパーツが3積みだと揃う確率も段違いに上がっており、この構築が成立してしまったことが、エクゾディアを最強たらしめる要因となったのは間違いありません。

 

 残りの枠はデッキを回すカードと延命用のカードで埋められています。鎖付きブーメランが守りのデッキに入っているのは意外かもしれませんが、守備表示に変更する効果は最低限の仕事をするため、悪くはありません。

 代わりに、当初壁モンスターを蘇生したり、相手のヂェミナイ・エルフやデーモンの召喚を蘇生して除去として使うために採用されていた死者蘇生は、使い勝手が悪く、抜けました。

 羽根帚は、採用しないことでブーメラン・援軍を溜め込まれてしまうものの、そこまで問題ではないため、不採用としています。

 

環境解説 何故エクゾディアが強いのか

 最終的にエクゾディア環境となった本環境ですが、調整を通してわかった、グッドスタッフが太刀打ちできなかった理由を解説します。

 最も大きな原因は、カードをドローすることで発生するテンポ・アドバンテージの差です。この環境はグッドスタッフもエクゾディアも強欲な壺、天使の施し、聖なる魔術師を等しく採用しており、デッキの回転速度自体は変わりません。しかし、エクゾディアがデッキの回転を直接勝利へ紐づけられるのに対して、グッドスタッフ側は蘇生溜め込みワンショットの準備にしか役立てることができません。そのため、同じドロー行為でも、価値に大きな差が生まれてしまっているのです。

 また、グッドスタッフ側は理論上可能とはいえ、余程上手く引き集めないと8000点のワンターンキルはできず、ヂェミナイ・エルフ等の攻撃を1パンチ程度通す必要があります。これは召喚権をダメージのために費やしているということになりますが、聖なる魔術師のセットとどちらが強いかと言われれば、当然後者です。そのため、グッドスタッフはデッキ本来の到達点のためにヂェミナイ・エルフを召喚するか、強力なムーブである聖なる魔術師セットの代わりにライフ獲得機会を失うかの選択を迫られる場面が多発します。

 一方、エクゾディア側はひたすらデッキを回すことだけを目指せばいいため、召喚権に余裕があります。1ターンに大量にカードを引ける環境で、唯一限られているのが召喚権ですが、エクゾディアはこの召喚権をもグッドスタッフより上手く使いこなすことができるのです。

 以上の理由から、この環境ではグッドスタッフはエクゾディアに大幅に不利となっています。

 

環境の感想

 いつの時代もそうだと思いますが、エクゾディアのような所謂ソリティア系のデッキの相手をするのはつまらないものです。ましてや、お互いにそれを使うとなるとこの上ありません。

 この環境は終着点としてエクゾディアのミラーが最適解となっており、どちらが早く揃うかの運勝負環境と化しています。

 一応、サンダー・ボルトや人喰い虫で相手のリバースモンスターを破壊する、というやり取りは存在しますが、あまりにも希薄であり、対人ゲームとして相応しくない環境といえるでしょう。

Vol.4環境 強欲な壺再利用の地獄

Vol.4発売 聖なる魔術師の登場

 1999年7月22日、Vol.4が発売されました。カードリストはこちら

ゲームの破壊者 聖なる魔術師

 このパックの目玉はなんといっても聖なる魔術師であり、このカードのためのパックであるといっても間違いではありません。

 効果はリバース時に墓地の魔法を回収と、一見スケルエンジェルと同程度の効果に見えます。しかし、ここまで読まれている方はご存知の通り、この時代は強欲な壺が3積みされています。ゲーム中に聖なる魔術師で強欲な壺を回収する動きは頻繁に発生し、しかもゲームを決めかねない強力なコンボです。

 そのため、聖なる魔術師も文句なしの3積み確定カードとなっています。

 

Vol.4環境 最強デッキ解説

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聖なる魔術師

 変更点は聖なる魔術師のみとなっています。

 聖なる魔術師の強みですが、やはりその真骨頂は強欲な壺の回収にあります。

 強欲な壺を普通に発動して1アド、聖なる魔術師から回収すればもう1アド、この動きのなかでカードを4枚も引いているため、追加の壺や魔術師を引ける可能性もあるという、アドがアドを呼ぶ壊れムーブとなっています。

 召喚権を1回犠牲にする必要はあるのですが、環境がそこまで速くないため、大したコストにはなりません。

 

 変更点が少ないため、今回は逆に採用に至らなかったカードについても触れておきます。

デーモンの召喚不採用

 デーモンの召喚は生け贄1体で攻撃力2500と、破格のステータスを誇ります。また、上記リストを見るとわかる通り、生け贄に最適なリバースモンスターも多く採用されています(反転召喚で効果使用後、生け贄にする)。

 こうした土台が整っているため、当初私たちもデーモンの召喚は流石に採用するだろうと考えていました。しかし、プレイを重ねる内に、実は壁モンスターの方が有用であるとの結論に達したのです。

 その理由は、デーモンの召喚自体が弱いというよりも、デーモンの召喚を強く使える場面が少ないことです。

 デーモンの召喚が単体で見れば優秀なのは間違いありません。では、デーモンの召喚を生け贄召喚したとして、強く使える場面とはどういったものでしょうか。それは、デーモンの召喚で相手のアタッカー、もしくはディフェンダーを戦闘破壊することです。逆にいえば、リバースモンスターの処理や、ダイレクトアタックに使うのはそこまで強くないということになります。

 リバースモンスターの処理に関しては言わずもがな、レベル4のアタッカーで事足ります。ダイレクトアタックに関しても、リバースモンスター+1600打点の場合と数値があまり変わりません。このことから、純粋なアタッカーとしては特別に強いわけではないことがわかります。

 残された唯一にして最大の強みが、戦闘破壊によるアドバンテージ獲得を狙えることです。しかし、プレイすると気づくのですが、実際にその機会が訪れることはあまりないのです。

 というのも、生け贄用のリバースモンスターが自分の場に、倒すためのモンスターが相手の場に存在していることが、戦闘アド獲得の前提条件となります。

 しかし、場が空の状態から、自分がリバースモンスターをセットしてターンエンド→相手がアタッカーを召喚してターンエンド、とはならないのです。必ず自分のリバースモンスターに攻撃をしかけてきます。そうなれば生け贄にするはずだったリバースモンスターは場に残らないため、前提が崩れます。

 また、自分がモンスターをセット→相手もモンスターセットエンドの場合、相手のモンスターもリバースモンスターの可能性が高いです。この場合も、デーモンの召喚を出してもリバースモンスターの処理に使ってしまうことになり、こちらも前提が崩れます。

 このように、デーモンの召喚でいい感じに戦闘破壊をする、という状況があまり発生しないことから、徐々に採用枚数が減っていき、最終的には不採用となりました。手札で腐る可能性のあるカードよりも、単体で最低限の仕事をする岩石の巨兵を優先した格好です。

闇の仮面不採用

 聖なる魔術師の対となるカードとして、闇の仮面も収録されています。魔術師が入るのならこちらも入るのでは、少なくとも岩石の巨兵よりは強いのではないか?と思う方もいると思います。

 闇の仮面が不採用の理由は、罠カードを回収することがあまり強くないから、という単純なものです。

 援軍、鎖付きブーメラン、落とし穴、どれも弱くはないのですが、わざわざ回収して使い回したいほどではありませんし、何を回収したか相手にバレてしまうというのも罠カードとしての強みを失います。

 このような理由から、闇の仮面は不採用としています。

 

環境の感想

 以前から存在した、強欲な壺によるゲーム支配がより進んでしまい、ゲームの面白みはかなり低下しました。

 強欲な壺が純粋なドロー効果であるため、1枚目の強欲な壺を引いたプレイヤーの方が続く壺、魔術師に辿り着きやすく、その差はどんどん広がってしまいます。

 早く強欲な壺を規制してほしいと強く感じた環境でした。

1999年制限改訂と、当ブログの方針

前書き

 遊戯王には環境のバランスを取るために、制限改訂(リミットレギュレーション)の制度が存在します。そして、Booster 3発売後くらいに最初の制限改訂が行われたようなのですが、補足が必要なため初めに説明いたします。

 行われたようだ、と書いた通り、調べてみてもこの制限改訂が実際にどういったものだったか確信できる情報が見つけられませんでした。

 当ブログでは、調べた中で最も信憑性の高い情報を元に進めていきたいと思います。それは、1999年7月21日発売のVジャンプに制限改訂のリストが載っていた、という事実です。これが初出なのかは不明ですが、そうだったものとして、このタイミングで制限改訂を適用します。

 また、この改訂は同年8月に行われた全国大会限定のものらしい、ということもまた事実のようです。全国大会の予選や、それ以降の公認大会ではどうだったかまではわかりません。

 当ブログでは、最強デッキを突き詰める=大会での勝利を目指す所謂ガチ勢を想定していること、それならば、全国大会に向けてこのリストを適用した調整を行なったであろうこと、制限改訂の内容が妥当なこと、等を考慮し、これ以降次の制限改訂まではこのリストを適用いたします。

 

制限改訂 1999年 改訂内容

制限カード

サンダー・ボルト

ブラック・ホール

落とし穴

 

 最初の制限改訂では、優秀な除去カード3種が制限カードに指定されました。

 個人的な感想としては、サンダー・ボルト、ブラック・ホールの規制には納得できる一方、落とし穴は規制の必要がなかったように思います。

 勿論、この時点ではまともな除去罠がこれしかなかったため、強力なカードであったのは間違いありません。しかし、ゲームのバランスを壊すほどのカードではなく、むしろこれ以外にまともな罠がなさすぎて、攻防のバランスが崩れるようにも思えました。

 また、この時点では禁止や準制限カードという発想がなかったのかもしれませんが、単純に考えてサンダー・ボルトとブラック・ホールが同等の規制というのは理解しかねます。この時代ではブラック・ホールに敢えて巻き込むことで強いモンスター等も存在しないため、明らかにサンダー・ボルトの方が上位互換と認められるからです。そのため、サンダー・ボルトを禁止にし、ブラック・ホールは準制限でよかったと思います。

 また、発売から日が浅いとはいえ、強欲な壺に手がつけられなかったのは非常に残念です。

 

改訂適用後の最強デッキ

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 今回規制されたカードはいずれも実戦級のカードだったため、デッキ構築に6枠という少なくない影響を与えました。しかし、この時代には他にまともな除去カードが存在しないため、代わりとなるようなカードを入れることができません。

 そのため、消去法的に、最もまともな壁モンスターを戻して対応しています。勿論あまり強くはないのですが、他のカードよりは役に立ちます。

 

環境の解説

全体除去減少の好影響

 全体除去の枚数が6枚から2枚と大幅に減り、ゲームにも大きな変化が現れています。

 これまでは全体除去は引かれていて当然だったため、モンスターを2体以上並べるのは、ライフを削りきる算段がついた場合くらいでした。

 これからは、全体除去のリスクは依然あるものの、引かれていない可能性に賭けて横に並べることも、プレイの選択肢として有効になります。即ち、リスクとリターンを天秤にかけてプレイを選択できる、プレイングの反映される環境になったということです。

鎖付きブーメランの評価UP

 これまでも強かった鎖付きブーメランですが、除去カードが減ったことで更に評価が上がっています。

 これまでは1600+ブーメランの2100打点でモンスターを戦闘破壊されても、返しで除去すれば2:2交換に持ちこめました。しかし、これからはそれが難しくなるため、2100打点が残り続けてしまう可能性が高まったのです。

 

環境の感想

 上述したように、全体除去の削減により、ゲームの勝敗にプレイが介入する幅が広がりました。これはゲーム体験としてとてもいいことだと感じており、かなり良い制限改訂だったのではないかと思います。

Booster 3環境 壁モンスターとの別れ

Booster 3発売

 1999年7月17日、Booster 3が発売されました。目立ったカードはないものの、アタッカーの充実によって環境には少なくない影響を与えました。カードリストはこちら

攻撃力1600が2種追加登場

 これまで1ヶ月以上に渡り、アタッカーの座はホーリー・ドールの1600打点が独占していました。しかしここにきて、グレート・ホワイト、斬首の美女と、2種類の同格モンスターが追加されました。

 後述しますが、モンスターのラインナップがディフェンダーからアタッカーに移行したことで、ゲームの動きは良くなりました。

鎖付きブーメランの追加枠 援軍

 そのターン中のみ攻撃力500アップと地味な効果ですが、攻撃力1600が殴り合う環境では鎖付きブーメランの4枚目移行として十分に採用圏内です。

 類似したカードとして城壁も登場していますが、壁モンスターが役目を終えつつあること、仮に有効活用できたとしても、アタッカーは残り続けてしまうことが理由で、使用には耐えません。

生まれるのが早すぎた 血の代償

 このパックでは長らく禁止指定されている血の代償も登場しています。

 この時代で使っても、弱くはありません。しかし、この頃はガジェットのような自身で後続を用意する手段もなく、ゲーム展開も遅いため、使っても単純に召喚を早めるだけしかできません。

 そして、早めたとしてもワンターンキルできる程の打点が出せることは稀であり、中途半端に展開してもサンダー・ボルト、ブラック・ホールで一掃されるのがオチです。

 そのため、このカードの活躍はもう少し後になります。

 

Booster 3環境最強デッキ解説

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 比較的簡単に踏み倒されるという問題もあり、主力モンスターは壁モンスターからアタッカーへの世代交代しました。

 また、壁モンスターが環境から減ったため、『守備』封じも打ちどころが限られ、抜けています。

 

環境の解説・感想

 デッキにはあまり変化がないように感じられますが、実際のゲームは大きく様変わりしています。壁モンスターがアタッカーへと移り変わったことで、睨み合いによって場が膠着することはなくなりました。

 その分ゲームはさくさく進むようになりましたが、この環境に限ってはさくさく進みすぎて逆に面白くないと思いました。

 この環境はブラック・ホールとサンダー・ボルトの計6枚の全体除去が存在するため、基本的にはモンスターは1体しか場に出しません。そのため、ゲーム中はモンスターの相打ち、もしくは除去(コンバットトリック)との1:1交換がひたすら繰り返されます。

 そして、どちらかがアタッカーが引けない等の事故を起こすか、先に死者蘇生連打でライフを削りきったら決着です。もはや作業ゲーに近いところまで動きがテンプレ可されており、しかもそれが最適解なため、プレイしていて面白みがありません。

 また、そうしたアドバンテージの差がつきにくい環境だからこそ、強欲な壺のゲーム破壊性は非常に高く、基本的にこれを多く引いたプレイヤーが勝つという事態を巻き起こしています。

闇界決闘記環境 羽根箒よりも強い鎖付きブーメラン

遊戯王デュエルモンスターズⅡ 闇界決闘記発売

 1999年7月8日、ゲームソフトである遊戯王デュエルモンスターズ 闇界決闘記が発売されました。このゲームソフトにはOCGカードが同梱されており、種類は少ないものの環境レベルのカードが含まれていました。カードリストはこちら

ハーピィの羽根箒

 禁止経験のある、最強クラスの魔法・罠破壊カードです。この時代でも強力なカードなのは間違いありません。

 しかし、この頃はまだ実用性のある罠カードが少ないため、複数の罠カードがセットされる状況というのは稀でした。そのため、しばらくは実際の性能ほどの評価を得られない時間が続きます。

鎖付きブーメラン

 こちらが今回の追加の目玉カードです。

 2つある効果はどちらも強力です。特に

攻撃力500アップの方は優秀で、環境が守備2000の壁が基準となっているため、ホーリー・ドールに装備すればこれを戦闘破壊していくことが可能になります。

 攻撃モンスターを守備表示にする効果も、相手のホーリー・ドールに使えば返しで戦闘破壊を狙うことができます。特に、ホーリー・ドール+鎖付きブーメランで壁モンスターを倒しにきたところにお返しで発動し、そのまま壁モンスターにブーメランを装備する動きは強烈です(メイン2で地割れ等されるリスクはあります。)。

死のデッキ破壊ウイルス

 禁止経験のあるカード2枚目です。将来的には大活躍するのですが、この時代には羽根帚以上に使い道が無く、採用されることはありませんでした。

 理由としては、コストにして強いモンスターが存在しないこと、発動できたとしても破壊対象となるモンスターが少ないことがあげられます。

硫酸の溜まった落とし穴

 一見すると壁モンスターの対処にもってこいのカードです。しかし、このカードでリバースモンスターを対象にしてしまった場合、そのリバース効果が発動する裁定であったのが問題でした。裏守備のモンスターは壁かリバースか見分けがつかないため、『守備』封じも一度攻撃してから使うのがセオリーです。ところが、このカードは表側守備表示になってしまうと対象に選択できなくなるため、結局裏目を抱えて発動するしかなく、採用には値しないと判断しました。

 

闇界決闘記環境 最強デッキ解説

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 攻撃力800の壁モンスターが抜け、デッキが引き締まりました。

 鎖付きブーメランの採用により、ホーリー・ドールの取り回しにはより慎重さが求められる構築となっています。

 

プレイング解説

ハーピィの羽根帚ケア

 羽根帚の登場により、罠カードを2枚以上伏せてターンを返すことにリスクが生じるようになりました。

 この環境では1ターンに2アクション起こす手段は死者蘇生しかなく、これはどのみち落とし穴で止まりませんので、1伏せが基本です。

 

環境の感想

 鎖付きブーメランの登場でゲームはより流動的になり、面白さは上がったと思います。ただし、強欲な壺がどうしようもない点は変わりません。

Vol.3環境 強欲な壺 遊戯王最大の過ち

Vol.3発売 革命的パック

 1999年5月27日、Vol.3が発売されました。2日前に発売されたBooster 2が打点の更新しか環境に齎さなかったのに対し、このパックは一環境を超え、遊戯王というゲームに革命を起こしました。それが効果モンスターの登場です。

 また、タイトルにもあるように、効果モンスター以外にも非常に大きなインパクトのあるカードも収録されています。カードリストはこちら

効果モンスター誕生

 遊戯王OCG最初の効果モンスターは、意外にもリバースモンスターでした。

 これまでモンスターには攻撃力・守備力しか判定の基準がありませんでした。それが効果モンスターの登場により、モンスターカードという枠組みの可能性が大きく広がることになったのです。

誕生するべきではなかったカード 強欲な壺

 これからの遊戯王全体で考えれば、効果モンスターの登場よりも大きな衝撃はありません。しかし、この時期に限定すれば、効果モンスターを差し置いて、理解できないほどに強烈なカードが産まれてしまいました。それが、強欲な壺です。

 長らく禁止カードでありながら、その知名度は非常に高いため、遊戯王をプレイしたことがなくても効果を知っている人もいるのではないでしょうか。ご存知の通り、このカードは引くだけで手札が1枚増えるというアドバンテージというゲーム性に真っ向から喧嘩を売っているカードであり、率直にいってゲームを破壊することしかしません。

 このブログをお読みになっている方に強欲な壺が何故強いのかを説明するのは蛇足だと思うので割愛します。しかし、単純な強さとは別に、このカードがVol.3という、遊戯王というゲームが成熟していない時期に登場してしまったことも問題なのです。

 これまでのデッキをご覧いただければわかるかと思いますが、この頃は自分のカードの効果でアドを増やすという行為は困難で、基本的には戦闘か全体除去でしかしかアドバンテージを獲得できません。そのため、強欲な壺でついてしまったカードの枚数差を埋めるのが難しすぎるのです。

 また、カードをサイクルするカードが乏しく、デッキを圧縮することもできません。よって、強欲な壺を引いたプレイヤーだけが2枚の圧縮ができ、2枚目に辿り着ける確率が高くなる、というのも問題です。

 当然のように規制がかかるまでは3積み以外あり得ないカードです。そして片方のプレイヤーだけが引いた瞬間ゲームの勝敗に大きく影響するため、ここからしばらくの環境は強欲な壺に振り回されることになります。

 

Vol.3環境 最強デッキ解説

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岩石の巨兵

 効果モンスター登場の影に隠れがちですが、最強の壁モンスターが登場しています。まだ遊戯王全体のカードプールも乏しく、依然として守備力2000は強力なため、このカードも文句なしの採用です。

人喰い虫

 目玉である効果モンスターその1です。

 リバースした際にモンスター1体を破壊することができ、壁モンスターは自分から反転召喚することで、ホーリー・ドールには攻撃されることでそれぞれ対応可能なため、モンスターでありながら除去としてとても優秀です。

スケルエンジェル

 人喰い虫と違いデッキ圧縮しかできないため、あまり強くはありませんが、この環境では強欲な壺を引けるかどうかが非常に重要なため、3積みしています。

 どちらかというと、スケルエンジェルを差し置いて入れたいカードが無い、という方が適切かもしれません。

『守備』封じ

 とても面白いカードです。環境は依然として壁モンスターが強いため、それを戦闘で乗り越えられるため3積みしています。

 攻撃宣言時に発動するような罠カードがまだ存在しないため、召喚が通れば安全に戦闘破壊まで持っていける点が安心です。

強欲な壺

 説明は不要かと思います。このカードが存在する限り、デッキを組む時はこれを上限枚数入れるところから始めます。

光の護封剣不採用の理由

 枠の都合で打点の足りていないモンスターが減るのは当然として、光の護封剣が抜けているのは説明が必要かと思います。

 結論から言うと、護封剣が時間稼ぎ以外の仕事をすることが難しくなったから、というのが理由となります。

 それは前からでは?と思われるかもしれませんが、以前の記事でお話ししたように、光の護封剣は打点で単純に殴り負けするモンスターを入れるよりはこちらを入れる、という意図がありました。

 この環境になり、とうとう素で殴り倒されてしまうというモンスターはいなくなりました。そのため、護封剣は本当にただ3ターンを稼ぐだけのカードとなり、それであれば採用に値しないと結論づけました。

 

プレイング解説

 これまでになかったリバースモンスターの登場により、それ関連でいくつか注意点があります。

裏守備に人喰い虫セットで返すリスク

 基本的にはどう使っても損のない人喰い虫ですが、例外として反転召喚されたスケルエンジェルに攻撃されるとアドバンテージを獲られてしまいます。そのため、相手の裏守備に対してこちらも人喰い虫セット、という返しは見た目以上にリスクがあります。

『守備』封じを裏守備に使うリスク

 『守備』封じは裏守備モンスターにも発動できるのですが、リバースモンスターの存在により、安易な使用は危険です。

 裏がスケルエンジェルだった場合は単純に打ち損ですし、人喰い虫も自分のモンスターがいる場合は手痛い失敗となります。

 これをケアするために、基本的に裏守備は一度モンスターで攻撃することが重要です。

 

環境の感想

 人喰い虫や『守備』封じの登場によって壁モンスターの突破がしやすくなり、全体のゲーム性としては楽しくなったと思います。

 ただし、強欲な壺だけは話が別であり、これを引けるか引けないか、何枚引けるかが勝敗に影響しすぎるため、運要素が高まってしまっています。本当に、このカードさえ無ければ良い環境だったと思います。