Booster 4、PREMIUM PACK環境 エクゾディア降臨
Booster 4、PREMIUM PACK同時発売
1999年8月26日、Booster 4が発売されました。カードリストはこちら。
また、同日に遊戯王OCG初の全国大会が開催されており、大会会場の東京ドーム内限定で、PREMIUM PACKが発売されました。カードリストはこちら。
このPREMIUM PACKですが、販売体制の不備により、当時販売中断となっています。それでも一定数は流通したことから、女剣士カナンの前例も考慮し、本ブログではこの日付に販売されたものとして扱います。
攻撃力のハイパーインフレ ヂェミナイ・エルフ
これまでの遊戯王は、1600打点のアタッカー達が主役でした。ところが、このブースターにて突然猛烈なインフレが起きており、下級1900打点というこれまででは考えられないスペックのモンスターが登場しています。他にも1850、1800打点も収録されており、1600ラインは一瞬で存在価値を失うことになりました。
最強ドローカード第2弾 天使の施し
打点のインフレ以上に強烈なインパクトを与えたのが、天使の施しの登場です。カードを3枚引いて2枚捨てるという、シンプルながら大胆な効果をしており、1枚のカードで3枚の手札を入れ替えることができます。これによってデッキの回転率が大きく上がり、事故の軽減に繋がります。
また、何よりもこのカードが強力なのは、墓地に捨てても問題ないカードを捨てることで、デメリットを踏み倒せてしまうことでしょう。しかし、幸いにもこの時点では、捨ててもアドバンテージを失わないようなカードはまだ登場しておらず、純粋なサイクルカードの位置に収まっています。
それでも非常に強力なカードであるのは間違いなく、墓地にこのカードと強欲な壺がある場合、聖なる魔術師でこちらを選択することも十分にあるほどです。
後程紹介する最強デッキもこのカードの存在なくして成立しないといっていい構築となっており、環境に与える影響はこれまでの全カードの中でも一二を争うレベルだと思います。
五体揃ったエクゾディア 始動の時
実は、これまでにエクゾディアの手足はポツポツと登場していました。それが、今回のPREMIUM PACKで本体が収録されたことで、ようやくデッキを組めるようになったのです。
ここまでの環境では、デッキタイプという概念がなく、単純に強いカードを詰め込んだ、いうなればグッドスタッフしか存在しませんでした。エクゾディアの登場は、グッドスタッフ以外のアーキタイプを環境にもたらしたという点でも、歴史的な出来事なのです。
Booster 4環境 最強デッキ解説
こちらが、この環境の最強デッキと結論づけた構築です。
エクゾディアパーツが全て3積みと、一見衝撃的な内容となっています。探究チームとしても、当初はこのようなリストは想定していなかったため、先に調整過程から説明します。
まず、始めに考案されたのが、ヂェミナイ・エルフをアタッカーに据えたグッドスタッフです。
前環境のリストから攻撃力1600の3種9枚を抜き、ヂェミナイ・エルフ、天使の施し、デーモンの召喚を採用しています。
ヂェミナイ・エルフに次ぐアタッカーであるメカ・ハンターが採用されていないのは、ミラーマッチでヂェミナイ・エルフに素で戦闘破壊されてしまうと損失が大きすぎるためです。
また、前環境で不採用だったデーモンの召喚を3積みできているのは、天使の施しのおかげです。召喚できれば強い反面手札で腐るリスクがありましたが、天使の施しによりリスクの軽減が可能になりました。手札から直接墓地へ送れることも重要で、死者蘇生溜め込みによるバーストダメージ向上に繋がっています。
上記グッドスタッフの作成後、エクゾディアは出揃ったばかりですが、この環境でも戦えるのか試すために、以下のようなデッキを仮組みし、グッドスタッフと戦わせました。
当初、グッドスタッフには到底敵わないだろうと予想していたのですが、実際にはこの構築でもグッドスタッフといい勝負、どころか微有利であり、本格的にエクゾディアの調整も開始しました。
そして、調整の結果壁モンスターや死者蘇生、羽根帚が抜け、エクゾディアパーツに置き換わることになりました。
このパーツ3積みエクゾディアに対して、メカ・ハンターを採用するなどして対エクゾを意識したグッドスタッフをぶつけもしましたが、結果としてはエクゾディアの大幅有利でした。
そうなると、環境はエクゾディアミラーを意識することになりますが、この時点のカードプールでは、これ以上ミラーマッチで強くなるカードが存在しないため、この時点で最強デッキと結論づけました。
以下、改めて最強デッキのリストです。
エクゾディアパーツ15枚
壁モンスターが抜け、代わりにエクゾディアパーツが3積みされています。この理由は2つあり、一つ目は壁モンスターに回す召喚権が無いからです。この環境では強欲な壺、天使の施し、聖なる魔術師によってかなりの高スピードで手札の入れ替えが進むため、毎ターンリバースモンスターを用意することは難しくありません。そのため壁モンスターを実際に場に出すことはほとんどなく、ほとんどは天使の施しの効果で捨てられていました。そして、どうせ捨てるなら、エクゾディアパーツにしておいた方が五体揃う確率が高まっていいというわけです。
二つ目は、天使の施しの存在です。エクゾディアパーツは同じパーツが被ってしまうと、片方は完全に意味のないカードになってしまうため、本来であれば全て3積みというのは無理のある構築です。しかし、この環境では天使の施しを乱発できるため、被りもそこまで気にならないのです。
エクゾディアパーツが3積みだと揃う確率も段違いに上がっており、この構築が成立してしまったことが、エクゾディアを最強たらしめる要因となったのは間違いありません。
残りの枠はデッキを回すカードと延命用のカードで埋められています。鎖付きブーメランが守りのデッキに入っているのは意外かもしれませんが、守備表示に変更する効果は最低限の仕事をするため、悪くはありません。
代わりに、当初壁モンスターを蘇生したり、相手のヂェミナイ・エルフやデーモンの召喚を蘇生して除去として使うために採用されていた死者蘇生は、使い勝手が悪く、抜けました。
羽根帚は、採用しないことでブーメラン・援軍を溜め込まれてしまうものの、そこまで問題ではないため、不採用としています。
環境解説 何故エクゾディアが強いのか
最終的にエクゾディア環境となった本環境ですが、調整を通してわかった、グッドスタッフが太刀打ちできなかった理由を解説します。
最も大きな原因は、カードをドローすることで発生するテンポ・アドバンテージの差です。この環境はグッドスタッフもエクゾディアも強欲な壺、天使の施し、聖なる魔術師を等しく採用しており、デッキの回転速度自体は変わりません。しかし、エクゾディアがデッキの回転を直接勝利へ紐づけられるのに対して、グッドスタッフ側は蘇生溜め込みワンショットの準備にしか役立てることができません。そのため、同じドロー行為でも、価値に大きな差が生まれてしまっているのです。
また、グッドスタッフ側は理論上可能とはいえ、余程上手く引き集めないと8000点のワンターンキルはできず、ヂェミナイ・エルフ等の攻撃を1パンチ程度通す必要があります。これは召喚権をダメージのために費やしているということになりますが、聖なる魔術師のセットとどちらが強いかと言われれば、当然後者です。そのため、グッドスタッフはデッキ本来の到達点のためにヂェミナイ・エルフを召喚するか、強力なムーブである聖なる魔術師セットの代わりにライフ獲得機会を失うかの選択を迫られる場面が多発します。
一方、エクゾディア側はひたすらデッキを回すことだけを目指せばいいため、召喚権に余裕があります。1ターンに大量にカードを引ける環境で、唯一限られているのが召喚権ですが、エクゾディアはこの召喚権をもグッドスタッフより上手く使いこなすことができるのです。
以上の理由から、この環境ではグッドスタッフはエクゾディアに大幅に不利となっています。
環境の感想
いつの時代もそうだと思いますが、エクゾディアのような所謂ソリティア系のデッキの相手をするのはつまらないものです。ましてや、お互いにそれを使うとなるとこの上ありません。
この環境は終着点としてエクゾディアのミラーが最適解となっており、どちらが早く揃うかの運勝負環境と化しています。
一応、サンダー・ボルトや人喰い虫で相手のリバースモンスターを破壊する、というやり取りは存在しますが、あまりにも希薄であり、対人ゲームとして相応しくない環境といえるでしょう。