遊戯王歴史探究 歴代の最強デッキを考える

遊戯王OCGの歴代の環境を実際にプレイし、その時点での最強デッキを考えていきます

Vol.1環境 全てはここから始まった

前書き

 最初の考察記事なので、本ブログの基本的な流れを説明します。

 記事は基本的に環境単位で執筆しますので、主に新カードの登場か、リミットレギュレーションの改訂がトリガーとなります。そのため、記事の始めで環境がどう変わったのかを紹介します。

 その後、環境考察を挟み、実際にプレイを重ねた中で導き出した、その環境における最強デッキを紹介します。最後に、プレイングの解説や、その環境をプレイしてみての感想等を付け加えて、1つの記事とします。

 

初期のルール「公式ルール」

 遊戯王はこれまでに何度かルールが変更されていますが、1番最初に制定されたのは公式ルールという名前のルールでした。遊戯王はルールが変更されるたびにゲーム性が大きく変わりますが、公式ルールは適用時期が現行ルールと最も離れていることから、様々な面で大幅に異なる代物となっています。そのため今回の記事では、環境考察に先駆けて、ルールの紹介から行います。

 ただし、現行ルールとの相違点を全て挙げようとすると膨大な文量になってしまうので、実際にこの環境をプレイするうえで重要になる点のみ解説します。

生け贄召喚の概念がない

 公式ルールでは生け贄召喚の概念がなく、モンスターはレベルに関係なく生け贄なしで通常召喚が可能です。

 そのため、このルール下ではレベルという概念は特に意味を持たず、モンスターは攻撃力/守備力の大小でのみ評価されます。

・魔法カード、罠カードは、それぞれ1ターンに1枚しか手札から出すことができない

 「手札から出す」という表現は、「手札からカードを発動、及びセットする」行為を指します。

 一見単なる使用回数制限なのですが、このルールには不明瞭な点があります。

 それは、魔法・罠ゾーンにカードをセットする際、相手にはそれが魔法カードか罠カードかわからないことです。

 例えば、既に魔法カードを発動したターンにカードを1枚セットするとします。

 この場合、伏せるカードは罠カードでなければいけないわけですが、その時点でそれを確認する術は相手プレイヤーにありません。

 この問題を解決するためには2つ方法があると考えます。

 1つ目は魔法・罠カードを手札から場に出すのは1ターンに1枚までと制限してしまうこと。

 2つ目はカードをセットする際、その種類を宣言する方法です。

 これらを比較した際、遊戯王というゲームにおいて、非公開領域の情報を、相手の宣言を信用することによって判断する、という行為に違和感があるため、今回の探究では1つ目のルールを採用することにしました。

 ちなみに、既にセットされている魔法・罠カードの発動制限はありません。

・どちらかのプレイヤーがデッキ切れになった場合、その時点でライフポイントの多いプレイヤーの勝利

 稀な決着のつき方ではありますが、試合が相当に長期化しやすい環境となった場合、ライフポイントの重要性が高まります。

・手札枚数に上限がない

 1ターンにリソースを集中させて試合を決めきるために、手札に大量のカードを抱え込む戦略をとることができます。

・先攻1ターン目はドローできない

 先攻展開といったものは存在せず、罠の先置きにもあまり価値がないため、後攻絶対有利といっていい環境です。

 

Vol.1発売 遊戯王の始まり

 1999年2月4日、記念すべき遊戯王OCG第1弾となる「Vol.1」が販売され、遊戯王の歴史が幕を開けました。カードリストはこちら

 このブースターパックの内容は、3種類に大別することができます。

1 通常モンスター

 この時点ではモンスターは通常モンスターしか存在しないため、ステータスが評価と直結します。

 ただし、最高打点がブラック・マジシャンの2500、次点が暗黒騎士ガイアの2300であるのに対して、3番手となるといきなり1200まで落ち込みます。この時点ではカードプールが乏しく、カードの強さに大きなむらがあることがわかります。

2 除去カード

 具体的には、ブラック・ホール、地割れ、落とし穴の3種を指します。戦闘を介さずにモンスターを倒す手段はこれら3種以外ありませんので、まさしく三種の神器といって差し支えありません。

3 装備魔法カード

 種族縛りありの攻守+300アップと、お世辞にも強いとはいえないカード群です。装備可能なモンスターを引けていないと、完全な事故要素となり、実質手札が1枚減った状態となります。

 

環境解説

 この環境ではひたすらモンスターで殴り合うという、たいへん原始的なゲームが展開されます。

 モンスターは大型、1200族、800族に分かれており、同サイズとの戦闘には装備魔法が有効となります。

 プレイせずともわかることではありますが、カードの性能差が激しいため、ゲームの勝敗は引き運に大きく左右されます。

 ブラック・マジシャンや暗黒騎士ガイア、除去三種の神器を多く引き込めればその分有利となり、反対に小さいモンスターや、対象不在の装備魔法を多く引き込めば負けに近づきます。

 

VOL.1環境 最強デッキ解説

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 まず、モンスターはステータスが大きい順に採用しています。ただし、完全にステータスだけで決めているわけではありません。

 ダーク・グレイまでは数値順ですが、眠り子、紫炎の影武者は比較対象として、守備力900のプチテンシや、800/800のドレイクが存在します。

 これらが優先されているのは、装備魔法の存在です。眠り子は秘術の書、影武者は伝説の剣を装備することで、同類を倒すことができます。2枚装備できれば、1200族にも勝ります。

 続いて、装備魔法が9枚採用されている点について解説します。とはいっても、採用理由は単純にこちらの方がマシだから、の一点につきます。

 具体的には、装備魔法を採用しない場合、代わりに弱小モンスターを投入することになります。

 弱小モンスターはいつでも場に出せるため、完全に腐ることはありません。しかし、これらは戦闘で機能しないため、できることは僅かなライフを削るか、身を挺して1回分の攻撃を防ぐか、です。

 召喚権とカード1枚を使って1回分の攻撃を防ぐというのはとても弱い行為ではありますが、この環境ではブラック・ホールの存在から安易な横並べにはリスクが伴うため、解決札を引くまでの時間稼ぎとしては悪くありません。

 問題は、弱小モンスターに枠を割いていた場合、その解決札の枚数が限られてしまうことです。

 装備魔法の場合、装備対象が引けるまで完全な死に札となるリスクは伴いますが、同類を一方的に戦闘破壊できるメリットがあります。

 同類同士の相打ちでも解決にはなるのですが、こちらの場に何も残らないのでその後のプレッシャーがないこと、暗黒騎士ガイアに至ってはブラック・マジシャンを討ち取れることを考慮すると、装備魔法3種投入が最も有効であるという結論に達しました。

 ちなみに、ダーク・グレイ、眠り子、紫炎の影武者の枚数が3、3、1なのは、伝説の剣の方が他2枚よりも価値が高く、小型モンスターにはあまり装備したくないからです。

 どういうことかというと、猛獣の歯、秘術の書が(1枚では)同じ攻撃力同士の戦闘でしか有効でないのに対して、伝説の剣は暗黒騎士ガイアに装備することで、ガイア同士だけでなくブラック・マジシャンにも殴り勝つことができるからです。

 

プレイング解説

 単純な環境ではありますが、実用性のある小技はいくつか存在するため、紹介します。

ゲームプランニング

 坊主めくりに近いゲームであることは間違いありませんが、ゲーム中にカードアドバンテージとライフアドバンテージを天秤にかける場面が頻出します。

 これはカードの強さにばらつきがあることが原因で、ブラック・マジシャン以外のモンスターは全て、素で戦闘破壊されるリスクを抱えています。そのため、カードアドバンテージを優先するプランは、比較的引きが良い場合にしかとれません。

 反対に、大型モンスターや除去カードを多く引けなかった場合、ライフを素早く削るプランに向かうことが多くなります。

 両プランでは、ブラック・ホールをケアするか、しないか、等でプレイングに違いがうまれます。

 カードアドバンテージプランをとる場合、モンスター2体を1枚で処理されるのを嫌うため、基本的は大型モンスター単騎で攻撃を繰り返します。相手はこれを倒せない場合ライフを犠牲にしますが、それも限界があるため、小型モンスターをセットすることで耐え凌ぎます。これを続けて、一方的な戦闘破壊でアド差が広がるのを狙います。

 一方ライフアドバンテージプランの場合、そもそも引けているカードがそこまで強くないことが前提ですので、ブラック・ホールをケアして単騎で殴るという行為は逆に勝ちから遠ざかるプレイングとなりやすいです。そのため、押せている時間帯にどんどんライフを押し込みます。最終的にカードの枚数差では不利になりますが、除去+ラストワンパンチ等でライフを削り切ることを目指します。

 この両プランは完全に独立しているわけではなく、グラデーションになっています。判断基準として、自分と相手の行動からどちらが良い引きをしているのかを予想し、自分の方が強いと考えればカードアドバンテージプラン、弱いと考えればライフアドバンテージプランに近づく、という流れになります。

 もっとも、ゲーム中盤までで大型モンスターと除去を2〜3枚ずつ引ければ、相手の引きも同じくらい強くない限り、まず負けることはありません。

大型モンスター温存

 カードアドバンテージ寄りのプレイで、敢えて小さいモンスターから場に出していき、それを討ち取りにきたモンスターを更に上から踏み倒すことを狙います。ライフを削るスピードは落ちます。

除去割り切り

 ライフアドバンテージ寄りのプレイで、除去を割り切って中型、大型を連打します。一気にライフを削れる反面相手が除去を引いていた場合の裏目は大きいので、仕掛けるタイミングの見極めが重要です。

モンスターの優先順位

 単純な話で、同じ攻撃力1200なら、装備魔法の対象となるシルバー・ファングは最後まで残しておきたいです。このように、同類のモンスターを複数抱えている場合は、装備魔法との兼ね合いで優先順位を決めます。

魔法カードセット

 この環境では実際にセットする必要があるカードは落とし穴のみとなっていますが、前述した魔法・罠カードの使用枚数制限ルールの対策として、魔法カードもとりあえず伏せておくことが正当化されます。これには落とし穴のブラフの役割もあり、相手の大型モンスター召喚にリスクを負わせることができます。

 セットする順序も重要であり、同じターンに2枚発動する必要がないものは後回しにします。

 例えば、この環境でブラック・ホールを同一ターンに2枚発動することはありません。そのため、他に魔法カードがあるなら、ブラック・ホールよりも先にそちらをセットした方がいい、といった考え方です。

落とし穴ケア

 できることなら、落とし穴で大型モンスターを除去されることは避けたいです。そこで、相手に伏せカードがある場合、敢えて大型モンスターをセットすることがあります。

 これにより、相手が小型モンスターをセットしたと思って攻撃してくると、大型モンスターはリバースして生き残るため、落とし穴にかからないというわけです。(大型モンスターセットに対して大型モンスターで攻撃されることは大きな裏目ですが、相手からするとセットが小型モンスターだった場合、1200族で討ち取れたものをわざわざ大型を場に晒したことになり、リスクが伴います。)

 

環境の感想

 今でこそ、遊戯王は公認大会も頻繁に開催されており、一定の競技性を前提として設計されています。

 しかし、この時点での遊戯王の位置付けは、おそらくコレクションアイテムとしての側面が強かったものと思います。

 そのため、遊ぶことはできるけれど、まともにやり込もうとは思えない環境でした。

 それでも、前述したように一定のプレイングや読み合いは存在していました。これは、遊戯王というゲームが持つ根源的な面白さなのではないでしょうか。

 諸々含めて、遊戯王はこういう始まり方をしたんだ、ということが実感できて、感慨深いものがありました。この、自分も歴史の生き証人になったような感覚を得られるのが、歴史探究の醍醐味だと思います。

 

 初回ということもあり、文量が多くなってしまいました。ここまで読んでいただきありがとうございます。

 最後に、私が友人達との間で考察できる範囲には、限界があります。実際にプレイしてみたり、カードリストを眺めていて気づいたことなどありましたら、是非コメントをお願いします。

 この探究がどこまで続くかはわかりませんが、どうぞこれからよろしくお願いします。